またまた図書館に関する本について書きたいと思います。
ある日地元の公共図書館へ行き予約本を受け取って帰ろうとすると、出入り口近くにある新刊図書コーナーの隅に、真白い装丁にシンプルにタイトルと著者名が配置された本に目が留まりました。
『Hidden Library, Invisible Librarian 医療と健康と図書館と、司書。』,郵研社,2024.
著者は「Independent Librarian 小嶋 智美」さんとあります。
前回の記事で「フリーランスの司書」さんの著書を紹介しましたが、プロフィールを拝見すると、この方も医療情報サービスを専門領域として大学と病院の図書館で司書として勤務された後、大学講師など多方面で活躍されていらっしゃるようです。
本書の内容は、「病院図書館」で働く司書さんの物語です。
病院図書館は職員以外は入ることができない「隠された図書館」であり、そこで医療情報サービスの専門職として働く「病院司書」は「見えない司書」だと著者は言います。
33の掌編からなる物語は、病院図書館の立ち上げから利用者である医療従事者へのレファレンスや様々な出会い、そして何よりも司書さんの類まれな努力によって、診療ガイドラインの作成会議に参加したり病院の患者さんのための「患者図書館」を立ち上げるため正規の病院職員になるまでになります。
物語の合間には病院図書館や医療情報サービスなどに関するコラムが挟まれ、一般の人にも分かりやすくなっています。
利用者に真摯に向き合いあらゆる努力を惜しまない作中の司書さんと著者には終始感銘を受けっぱなしなのですが、特に印象に残ったのは、著者の闘病中であった友人の「患者が『知りたいこと』と『知らなければいけないこと』には違いがある」との言葉です。
それに対して著者は『知りたいこと』のみに目を向け、根っこにある『知らなければいけないこと』に気づき、大切にしているだろうか。何より、それらを押し付けることになっていないだろうか、「正しい情報」とはどういうことだろう、と自問します。
このことは医療情報に限らず、利用者に情報を提供する側としては常に考えていきたいですし、利用する側としても意識したいと思います。
同じ「司書」という職業を名乗ることが恥ずかしくなってしまいましたが、1ミリでも著者に近づけるようにがんばろう、と決意を新たにしました。
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